楊貴妃はなぜ皇帝を魅了できたのか

皇帝をひきつけたものは

 中国の唐の時代、玄宗皇帝の寵愛をその身に受けた、世界三大美女の一人である楊貴妃は、エジプトのクレオパトラと並んで、絶世の美女の代名詞とも呼べる女性です。

 当時、夷狄(野蛮人)とよばれて、中国人から蔑まれていた辺境の胡の国出身であった楊貴妃が、時の絶対権力者の寵妃という地位につくことができたのは、その美貌と知性はもちろんのこと、彼女の身体から発散していた自然の芳香を、玄宗皇帝が愛したためと伝えられています。

 玄宗皇帝が楊貴妃との愛に溺れているうちに唐の国の政治は乱れてしまい、その政治に反旗をひるがえした軍に追い詰められた皇帝が自分自身の手で愛する楊貴妃を殺害してしまうという悲劇的な末路を迎えてしまうことになってしまいます。皇帝は妃の香りをしのんで、その棺を竜脳(樹液から作られる香料)の香りで満たしたと伝えられています。

軽度のワキガで魅了

 皇帝を魅了し、国を滅ぼすもとになった楊貴妃の身体のニオイとは一体どういうものだったのでしょうか。

楊貴妃は、温泉に香りの良い草花を浮かべて湯あみしたり、香木で建てた家の中で香料をたちこめさせて楽しんだりと、人工的なニオイをふんだんに活用しました。

ですが、そもそも最初に玄宗皇帝をひきつけた自然の芳香とは、彼女自身の軽度のワキガだったそうです。中国人は体臭が薄く、ワキガが少ない民族であるために、辺境の国から来た楊貴妃の、いわば人間ジャコウのようなニオイに、皇帝はえもいわれぬ魅力を感じたのでしょう。

 また、ワキガは汗や汚れが加わると強い異臭になってしまいますが、楊貴妃は湯あみをし、専用の大きな浴槽を作ったほどなので、不潔とは無縁だったのでしょう。だからこそ、体臭を純粋な香料のように保つことができたのだと考えられます。