ニオイで異性を誘う動物

生殖行動を促す

 犬や猫などの動物は、発情期にはさかりのついた雌犬や雌猫が外を通ると、雄が身もだえをして切なげな鳴き声をあげるので、すぐにそうだと分かるものです。

 または犬を散歩に連れ出したときに、雌の残した尿のニオイを熱心にかいで、なかなかその場を動こうとしないこともよくあるものです。これは、雌の尿に発情期がきたことを雄に知らせて生殖行動を促すという、ある種の物質が分泌されているためです。

 このように、ある程度遠くまでニオイを放って、異性に性的反応をとらせる分泌物を性フェロモン(性誘導物質)といいます。動物は生殖できる期間が限られているので、その時期を逃さずに子づくりをしなければ、子孫を残すことができないのです。

 そのため、準備が整ったことを異性に知らせるために、ニオイを放っているというわけです。

ジャコウのニオイ

 動物の性フェロモンでよく知られているのは、古くから香水の原料として使用されているジャコウです。雄のジャコウジカの精嚢でつくられるこの分泌物は、1立方メートルあたりに2億分の1gを分泌するだけで、雌を反応させることが可能なのだそうです。

 また、ジャコウのニオイはシカの雌だけでなく、人間の女性にも働きかけて、性ホルモンの分泌を高めることが判明しています。とくに、女性の排卵時にはジャコウのニオイに対する感受能力が高まるという研究報告もあります。

 そのためジャコウは、その高貴な香りを楽しむのみならず、寝室における媚薬的な使い方もされてきました。ただ、性的に成熟していない子どもと男性の半数は、ジャコウのニオイを感じ取ることができないそうです。